税理士vs弁理士|難易度や職業事情を徹底比較!あなたはどっち派?

税理士と弁理士。

前者は税金や経理のプロであり、後者は特許や知財に精通しています。

どちらかの資格を取得して将来活躍したいと考えている人も多いでしょう。

そこでこの記事では、ちょっとばかりユニークな士業比較をしてみたいと思います。

相対化することで、相手士業への理解を深めたり、今まで見えていなかったものが見えてきたりするからです。

どっちの資格を取ろうか迷っている人はもちろん、他士業に興味のある人も参考にしてみてください。

なお当記事は筆者の個人的な見解に基づくものであることをご了承ください。

この記事の執筆者について

略歴:特許事務所→公認会計士→監査法人・会計士事務所→弁理士→独立(会計事務所・特許事務所経営)

特許事務所を経営する父親の長男に生まれる。
そうした背景もあって学生の頃から知財に関与していたが、ある日、心機一転、会計業界に飛び込む。
その後、父親の健康事情から家業を承継するとともに会計事務所を開業。
長期にわたり複数の士業に携わりながら、様々な事務所や実務を経験する。

目次

税理士vs弁理士①:試験難易度

図書室で勉強する女性

どちらも資格取得に複数のルートがありますが、以下では国家試験受験を前提とします。

両資格とも

  • 基本的に仕事しながらの受験である
  • 受験勉強が長丁場になる

結論として、ともに試験は難しく、資格取得までの道のりは相当険しいです。

ですが、その難しさの中身は同じではありません。

その点を具体的に見てみます。

🍀税理士試験

税理士は会計2科目、税法3科目の計5科目の合格が求められます。

この5科目は科目別に合格すればよく、原則、同時合格を求められる弁理士とは異なります。

ですが、この科目別合格、想像以上にキビシイ!

各科目の合格率は約10%前後ですが、1科目ごとの競争自体がシビアで結構大変なのです(また計算と細かな暗記が無味乾燥で、あまり面白みは感じれらないかもしれません)。

受験が長期化するにつれ、マンネリ感がでてきて集中力が続かなくなってきます。

その結果、例えば会計2科目と税法1科目、計3科目で止まってしまう、
法人税法がどうしても受からず、10年が経過した、など、合格はなかなか難しかったりします。

結果、科目合格のままで終わってしまう人が少なくありません。

そこで活用されるルートが大学院での税法2科目免除です。
資格取得のハードルが一気に下がります。

🍀弁理士試験

税理士と異なり試験は3段階。短答試験、論文試験、口述試験に合格しなければなりません。
最終合格率は約10%(ただし令和3年は6.1%。合格率は結構、年度によって変動します)。

計算科目がないという点では税理士より楽ですが、難解な法律科目のオンパレードです。

しかも短答試験の暗記量は半端ないです(司法試験や会計士試験よりも多いと思う)。
予備校のテキストも電話帳の山となります!

さらに注目すべきは受験者層
東大・京大等の旧帝大(プラス東工大、早慶)が受験者・合格者の多くを占めています(参考:特許庁HP・令和5年度弁理士試験最終合格者統計

受験者たちの地頭が違うと言ったらよいでしょうか。

なお、弁理士にも試験免除制度があります。
一般的には、大学院の修士号一定の国家資格を通じて論文選択科目の免除を狙っていきます。

税理士vs弁理士②:資格(試験勉強)と実務は別物?

そんな難しい国家試験ですが、受かっても実務に直結するとは限りません。
受験勉強では実務的判断能力等は身につかないからです。

とはいえ、税理士試験での勉強は実務に結構役立つものです。

確かに計算テクニックや細かな法令の暗唱までは不要ですが、知識がないと話にならない事項も少なくないのです(特に税務は知識勝負の側面があります)。

これに対して、弁理士試験は専門家として知っておくべき事ばかりなのですが、通常の実務では(試験とは)全く別次元のものが要求されます。

例えば、試験では特許法(法律)について細かく問われます。
他方で日常の実務では、技術内容の理解を前提とした、発明の創意工夫についての説明能力が求められるのです。

文系出身の弁理士志望者は慎重に:
文系出身者も絶対不可能というわけではないのですが、就職・実務どちらも相当大変だと思います。
確かに意匠・商標分野もありますが、特許をやるとなると、できる分野は限られてきます。
一般論となりますが、文系出身で税理士か弁理士かで迷っている人には、税理士の方がお勧めです。

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税理士vs弁理士③:需要・つぶしがきく度合

書類の内容を確認する

税理士の仕事は、おカネや税金を扱います。

個人・会社を問わず必須のものですし、どんな事業にせよ必ずついて回ります(日常レベルでも経理は不可欠ですし、毎年の決算・税務申告も避けられません)。

その意味で税理士は、専門的である一方、広範囲でつぶしがきくといってよいでしょう。

それに対して弁理士。

極めて高度な内容を扱うのですが、業務は税理士とは対照的といえます。

特許の取得は任意ですし、昔と異なり特に中小企業の特許離れは顕著です(一般の中小企業には、特許はビジネスの贅沢品のように映るようです)。

また弁理士が知財から離れたら、その技能を使うことは殆どありません。
専門的過ぎて、つぶしがきかないのです

さらに税理士業務は継続性があるのに対して(顧問など)、弁理士業務は基本的に(出願という)単発のものです
なので弁理士が中小企業を顧客にする場合は、仕事の開拓が常に必要となってきます。

結論として税理士と弁理士とでは、需要面、つぶしがきく度合、そして安定性という点で差異が生じてきます。

税理士vs弁理士④:役所対応

税理士・弁理士の仕事で、役所(税務署や特許庁)が関わってくる場面は、それぞれ次の通りです。

  • 税理士:申告書を作成して税務署へ提出する/税務調査への対応・交渉
  • 弁理士:明細書を作成して特許庁へ特許出願する/出願審査(特許できるか否かの審査)の応答(意見書・補正書など)

両者とも役所への代書屋さんという点で共通しますが、その対応につき雰囲気の違いが感じられます。

まず弁理士からです。

筆者の個人的な感想ですが、弁理士の特許庁への応答は淡々と書面(意見書や補正書)でやっていく感じです。

また弁理士の顧客(特に中小企業)は税務調査時にありがちな物言いはあまりしてきません(そもそも顧客は特許については殆ど理解していない)。

それに対して税務調査は少し厄介です。

確かに税務でも理論武装や証拠の整備は大切ですが、税務署との駆け引き等が全くないわけではありません。

さらにこれに顧客が口を挟んでくるとなると、さらに面倒なことになります。

結果、弁理士は比較的ビジネスライクに、税理士は政治的人間的にコトを進めることがあります。

税理士vs弁理士⑤:仕事に創造的側面はあるのか

色鉛筆で何かを描き始める

一般的な日常業務を見てますと、税理士は記帳代行や申告書の作成がメインです。

しかも、今日ではソフトが大方やってしまうので、日常業務はルーティンワークになりがちです。

その意味では、税理士業務は創造性に乏しいと言わざるを得ません(言い換えれば、誰がやっても同じ結果になりやすい)。

これに対して弁理士の作る明細書(特許の出願書類)は、ソフトで自動的に作成というわけにはいきません。

この明細書(仕事の成果物)は、2つと同じものができませんし、1000人の弁理士がいたら1000通りのものができるのです。

ズバリ創造性に富んだ仕事といえるでしょう。

しかも、この仕事は職人芸的なところがありますし、いわゆる匠の技が求められます。

当然ながら、通常は一人前になるのに税理士以上に修業が必要です。

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税理士vs弁理士⑥:収入

ザックリみて、どちらも平均年収はともに700万円くらいといったところでしょうか。

独立して事務所が軌道に乗れば年収数千万円も十分あり得ます(注:独立した場合は、かなり個人差がでてきます)。

また、どちらも、通常、無資格で実務を始めますし、仕事をしながら資格取得の勉強をしていきます。

初任給は(無資格・未経験を前提とすると)30万円に届かないでしょう(初年度の年収が400万円いけばよい方です)。
要するに見習い(丁稚)からのスタートです。

注:今日では新規弁理士試験合格者の約半分が会社員です。
つまり実際は、待遇も含め一般のサラリーマンと変わらないということです。

なお、税理士も弁理士も年収を千万円単位で上げるには、事務所勤務・独立を問わず、仕事や顧客の開拓が必要です(申告書や明細書の作成といった実務だけでは限界があります)。

要するにコミュニケーション能力を前提とした営業能力がおカネに結びつくということです。

税理士vs弁理士⑦:独立のしやすさ

ここでは独立について見てみます。

今日では昔と違い、どちらも資格だけで独立するのは(顧客を開拓するのは)困難です。
報酬単価も昔に比べ、2分の13分の1は当たり前です。

ですが、結論的には単価は厳しいものがあるもののまだ税理士の方が独立しやすい、というのが正直なところ。
理由は先ほどお話ししたニーズと安定性からです。

税理士独立については、とりあえずかき集めれば何とかなる、というのが筆者の感触です。

これに対して弁理士。

国内マーケットそのものが小さいうえ、絶対的なパイが縮小傾向にあります
結局、特許は任意であり、経理や税金とは次元が異なるのです。

事実、弁理士での独立は、近年(ゼロではないものの)昔ほどには聞きません。

先ほど言いましたように会社員が弁理士試験合格者の中心ということもあり、独立志向自体が弱まっています。

仮に独立したとしても、事務所の収益はかなり厳しく(例えば事務所の年間売上が300万といった具合です)、
他の特許事務所でパートをしたり、外注を引き受けたりするケースが多いです(あるいは予備校講師など)。

税理士vs弁理士⑧:年齢層

  • 共に高齢化が進んでいる
  • 若い人たちにはチャンス!

どちらも業界の年齢層は高めです。

税理士の平均年齢は60歳前後、弁理士でも50歳以上
他の士業と比べて高齢化が顕著です。

また、試験合格者の主な年齢層も、税理士、弁理士ともに30代から40代が中心(ただし近年、弁理士は20代が増えてきています)。
これに加えて役所(税務署や特許庁)OBの割合も少なくありません

この高齢化については、色々な見方ができると思いますが、実は若い人には絶好のチャンスともいえます。

当然と言えば当然ですが、年齢が上がると、新しいことや時代の急激な変化に追いついていくのが大変す(とくにIT・情報通信分野)。

逆に言えば若い人には、世代交代とともに差別化のチャンスでもあるのです。

税理士vs弁理士⑨:国際業務の可能性

国際業務と言えば、税理士なら国際税務が、弁理士なら国際特許がまずは浮かびます。
企業活動のグローバル化に伴い、これらのマーケットは拡大することはあれ、縮小することはないでしょう。

ただし、業務としては特殊な部類に入りますので、

  • 海外代理人(現地の専門家)との連携
  • 英語力

の2点が不可欠です。
特に海外の税制や特許制度は、現地の専門家がやりますので、彼等の協力が欠かせません。
しかも彼らとのやり取りは通常は英語になるでしょう。

また、よく言われることですが、国際業務(国際税務と国際特許)は報酬が抜群です!(特に外資は払いが良いことで有名)

他方、両者には次のような異なる点もあります。

国際税務国際特許
業務の忙しさハードワークコスパ最高!
業務形態BIG4などの組織形態個人事務所でも一般的

詳細は省きますが、
とにかく国際税務は(報酬が高い分)ハードなうえ、あまり個人の税理士事務所で扱うことはないでしょう。

対して、国際特許は通常の(国内)出願業務よりも負担は意外と軽く、かつ遥かに稼げます!

また、国際特許は個人事務所レベルでも十分対応することができますし、実際に中小企業関連でも海外出願に携わる機会は少なくありません(特にアジア方面)。

税理士vs弁理士⑩:顧客との関係~やっぱりがココが悩みの種~

悩む中年男性

やはり顧客がシビアになってくるのは自分たちの懐事情が関係してくる時です。
状況次第では個々人の感情も介入したりします

この点、やはり税理士の方が大変です。

税金というお金を巡り、顧客と対立したり、税務署と顧客との間で板挟みになってしまうからです。

対して弁理士。

筆者の経験上から見ると、特許自体(仕事の成果物そのもの)についてはそれほどトラブルは起こらないもの。

問題になるのは、むしろカネの問題です。
つまり弁理士からの請求書絡みが多いのです。

弁理士としては十分説明したつもりですが、複雑な手続きを進めるに際し(顧客からすると)予期せぬコストが発生してしまいます。
結局、ここでトラブルが発生!

ここで、特許に慣れている大手メーカーなどは除く、と言いたいところですが、報酬(単価)交渉を巡っては、結構、対峙するものです。

ダブルライセンスの可能性

最後に税理士×弁理士のダブルライセンスの可能性について触れておこうと思います。

なかなか接点が見つかりづらい両資格ですが、知的財産の価値評価という視点で様々な可能性が見込まれます。

これについての手法に需要が見込まれると、例えば特許権などを担保化して資金調達につなげたりできるでしょう。

ただし、特にゼロから資格を目指す人は次の点に留意すべきです。

  • どちらの資格の業務をメインにするか
  • メイン業務については十分実務経験を積んでおくこと
  • 顧客のニーズを見極めること

要するにただ漠然とダブルライセンスを狙うのではなく、しっかりと業務の方向性なり戦略を立てていくということです(でないと、中途半端になってしまったり、ただの資格マニアで終わってしまいます)。

また、何事もそうですが顧客のニーズがあってこそ成り立つものです。

そのためには、単に仕事の出口(申告書や明細書の作成)だけでなく、入口(顧客のビジネス)に関心を持ち、どうしたら知財がお金に結びつくかを考えることが大切です。

パイオニア的な色彩の濃い業務ですので試行錯誤が伴いますが、これは!というものがありましたら、ぜひ挑戦していただきたいと思います。

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おわりに

税理士と弁理士を様々な角度から比較してきましたが、いかがだったでしょうか。

専門性の高い分野に就くと、どうしても視野が狭くなる半面、隣の芝生が青く見えたりするものです。

今回の記事では、そうした事態を緩和したいという思いもありました。

参考にしていただけたら幸いです。

最後になりましたが、税理士試験並びに弁理士試験の受験生の皆様につきましては合格を心より願っています。

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