税理士や会計事務所の仕事に興味を持たれている方は多いと思います。
確かに、この仕事は”おカネ”という大切なものを扱うので、大変やりがいのあることに間違いないのですが、
だからといって万人に安易に勧められるものでもありません。
やりがいばかりではなく、その裏面として非常に厳しい側面も付いて回るからです。
まさに職業上の適性が厳しく問われると言ってよいでしょう。
そこでこの記事では、税理士・会計事務所に向いている人の特徴について解説していきます。
筆者は税理士をする前に、顧客サイド(特許事務所経営)に長くおりました。
税理士になって改めて感じたのは、顧客と税理士との間には、それなりに隔たりがあるということ。
もちろん税理士は公正中立な立場にいますし、顧客の心情や立場を100%理解するのは難しかったりするものです。
今回は、その顧客サイドの視点も十分踏まえたうえでお伝えしようと思います。
税理士・会計事務所に向いている人の特徴
顧客や経営に関心がある

何と言っても、先ずはこれが大事。
顧客あっての職業だからです。
言い換えれば、書類の作成ばかりでなく、顧客に目が向いていなければならないということです。
結局、顧客との信頼関係は、常に誠意をもって顧客に寄り添うことから築かれていくものですが、
会計・税務を通じてクライアントや彼らの経営をサポートしたい
この意気込みこそが、この仕事をしていくための原点です。
もちろん自身の成長の度合いや、さらには税理士としての成功の程度も全く違ってきます。
以下で述べる個々の点にも少なからず影響してきます。
几帳面で細かい作業が苦にならない
今度は実務的な適性についてです。
ちょっと厳しいことを言いますが、本来的には
他者のおカネを計算・勘定するときは、1円たりとも間違いは許されません。
現実には人間はミスを犯すものですが、仕事に当たるときは、こう肝に銘じて緊張感を持たなくてはならないのです。
これは、外科医を信じて手術台に上がる患者さんをイメージもらうとよいでしょう。
手先が狂う外科医やミスをする税理士に、安心して仕事を任せられるでしょうか。
そういうことです。
税理士・会計事務所はプロフェッショナルです!
その自覚があるか、ご自身に確かめてみてほしいと思います。
コミュニケーションに困らない
会計事務所には、閉じこもって黙々と計算や集計ばかりしているイメージがあるかもしれません。
人と話したりするの?と疑問に思う人もいるでしょう。
しかし、やってみると分かりますが、特に最初は分からないことだらけ。
どうしても所長や先輩に確認したり、尋ねたりしなければならない事柄がでてきます。
確認しないまま(曖昧なまま)仕事を進めてしまうと、あとで取り返しのつかない事態に発展しかねません。
また(事務所内とは別に)顧客を具体的に担当するようなると、顧客(通常は中小企業の経営者)と話をする機会がでてきます。
現実には、電話等でどんな質問が飛び出してくるかわかりませんし、顧問先の社長から愚痴をこぼされるかもしれません。
実は、ドシドシ質問される、愚痴をこぼされる、とは
それだけあなたが頼りにされている
ということです。
なので、最初は上手く回答できないかもしれませんが、
誠意をもってコミュニケーションに努めることが大切になってきます。
コミュニケーション能力は税務署との折衝でも必要(後述参照):
コミュニケーションが大切な場面の一つに税務当局との折衝の場があります。
ここではそれなりにスキルのいるところですが、中にはうまい具合に調査官と交渉できず、キレてしまう税理士もいます。
半ば、政治的な交渉っぽいことも(こっちは譲るから、そっちは…みたいなこと)ないわけではないですが、
ここでしくじると、顧客に不利に働いてしまったり、顧客と税務署との板挟み状態に陥りかねません。
自ら積極的に調べていける

上で述べた通り、所長や先輩とコミュニケーションを円滑に取れることは大切です。
ですが、最初からなんでもかんでも聞けばよい、というのでは職業会計人としては失格です。
まずは、自分で(完璧でなくてもよいので)調べましょう。
税法の条文や基本通達、さらにはこれらに関する解説本(基本通達逐条解説や図解シリーズなど)あると思います。
具体的な事案→関係すると考えられる法令・通達→これらの事案への当てはめ、及び、自分なりの考えや結論
これらを整理したうえで確認や質問をするのです。
(間違ってもよいので)こうした(努力をする)姿勢を一生懸命に示すだけでも、所長やスタッフたちはあなたに対して好意的な対応をするでしょう。
内心でも「とてもいい人が入所してくれたと」と思ってもらえるはずです。
プロフェッショナルの仕事の多くは調査でもある(コラム):
税理士に限らず、プロフェッショナルと呼ばれる仕事の大半はリサーチです。
確かに経験を積めば、即答できる(既存の知識だけで処理できる)ものも少なくありません。
ですが、未知の事案や二つと同じものがないケースもあったりします。
常に調べて、調べて、考えて、考えて…
日々この繰り返しで、これがまた実績として自身の能力を高めていけるのです。
勉強好きで向上心がある
ご存じのように、税法は毎年変わりますし、新しい裁判例も出されたりします。全く新しい制度ができることもあるでしょう(例:インボイス制度など)。
特に顧客にしてみれば(特に税金絡みでは)ビクビクものと言っても過言ではありません。
こんなときこそ、税理士や会計事務所は頼りになるもの(というより、唯一のよりどころです)。
上で述べた手術台ではないですが、今はおカネのお医者さんに相当する、あなただけが頼りなのです。
なので、税制改正はもちろん、できるだけ経済関連では広く勉強しておくことが求められます。
例えば、私などは、常に「週刊 税務通信」を持ち歩いていましたし、
最低限、今どんなトピックがでているか、くらいはチェックしていたように記憶しています(というより、頭と体が自然とそのように動いてしまう)。
決して秀才タイプである必要はありませんが、常にプロとしての向上心は持ち続けていたいものです。
冒頭で「顧客や経営に関心がある」ことの大切さを述べたのは、こうした向上心を担保できるからです。
体が丈夫である
これもご存じのように、12月から3月、そして5月頃は会計事務所の繁忙期です。
事務所や担当する顧客数にもよりますが、平均して50時間くらいの(確定申告期限前の2週間は、それ以上の)残業があるのが通常です。
そこでは膨大かつ細かな作業に加え、夜も遅くなる日が続くので、健康管理だけは注意したいもの。
自由業によっては、仕事量や仕事時間を完全に自分でコントロールできますが、
税理士をはじめ士業は、通常、法定期限というものがあり、しかも一時期に集中しやすい傾向があるのも確かです。
これまた医者のたとえになりますが、税理士も同様、体力勝負の時が(一年中ではないですが)あることは認識しておいてください。

できればここまで備わっていると理想的
神経が図太く、プレッシャーに強い

ここからは、やや裏話的になりますが、以下のようなマインドも税理士にはあるとよいでしょう。
まずは、神経が図太く、プレッシャーに強いことです。
税理士は、先で述べた通り、細かな数字を扱いますので、神経質で繊細な人が多いのでは、と思う人もいるかもしれません。
でも、税務判断するときはもちろん、日常の処理でも、結構プレッシャーがかかるものです。
また税務調査や経営者との面談では、緊張する場面が少なくありません(税金が前年度より高くなって、不機嫌に問い合わせてくる事業主は結構いる!私は殆どしなかったが…)。
細々とした作業を投げ出さずやり遂げることはもちろん大切なのですが、多少のプレッシャーにはびくともせず、リスクを大胆に背負うぐらいでないと、最悪、メンタルが参ってしまいます。
たまにいるんですね、
税務処理ひとつとっても「間違えたらどうしよう、どうしよう」とソワソワしている人。人柄はいいんですけど…
先々やっていけないかもしれません。
ある種のしたたかさも必要
上と関係しますが、これも備えていると理想的です。
実務では、法令通り四角四面になんでもいくとは限りません。
例えば、個人事業主での家事費の按分などで、大雑把にやってしまっているケースも多いでしょう。
キッチリ正しくやりたいところですが、顧客の方でもなかなか難しかったりします。
他方、税務当局側としては(調査で)いくら税金を取ってこれるか(いわゆる増差)、に関心があります。
そこで避けられないのが、上でもコメントした政治的な交渉事。
「そっちは譲るから、こっちは認めてよ」的な側面が完全には排除できなかったりするのです。
また、いわゆるグレーゾーンの問題に出くわしたとき、あるいは強硬な調査官に出くわしたときなど、困難な場面に直面することもあり得ます。
こうした場合、簡単に折れてしまい(素直に?)「ああ、そうですか」となっては、顧客からすれば「何のために高い報酬を払っているんだ⁉」となってしまいます。
逆に、中には勢い余って感情的な応答をする税理士もいますが(正義感溢れる若手にたまにいる)それではダメ。
顧客にとってマイナスの影響以外ありません。
そうではなく、あくまで冷静に思考し困難をくぐり抜けていくのです。

税理士・会計事務所に向いていない人~こんな人はやめた方がよい~

結論として、税理士の仕事に向いていない人というのは、これまで述べた特徴を著しく欠いている人、ということになります。
そこで、ここではその中でも、特に注意したい人について示しておきます。
大雑把な性格の人・細かなことに目が行き届かない人
実はこの問題は微妙なところがあります。
大雑把というと聞こえが悪いですが、大局的な観点で物事を見る、とも受けとめられるからです。
ただし税理士では特に注意が必要なところとなります。
当然ながら、ミスが多いと契約解消につながりかねませんし、
たとえ仮に一つのミスだけでも、顧客からすれば「他にもあるんじゃないか」との疑念が湧いてきてしまうものです。
そしてさらに怖いのが、税法の勘違いや条文の見落とし。
特に消費税絡みでは結構多く、しっかり確認していなかったり、スタッフに丸投げしていた結果、税理士損害賠償にまで発展してしまうことがあったりします。
プロとしては失格ですね。
あとついでながら、もう一つ大事なことが、期限や時間、約束を守ること。
税務業務には申告期限等、法定の期限が定められています。
これを徒過してしまう、信頼関係はもちろん全てが一瞬に失われてしまいます(ペナルティーも大変厳しいものとなっています)。
あまりにも当たり前すぎて、書くまでもないと思ったのですが、念のため添えておきます。
公認会計士は税理士に向かない?(コラム):
公認会計士の中心業務は監査業務です。
監査では基本的に自分で経理をやったり決算を組んだりはせず、(クライアントが作ったものを)チェックしていきます。
また、現場では細かな数字を確認しますが、監査で大切なことは大局的な視点で物事を見ること。
なので、いざ自分で税理士業務をやると面食らう会計士がいます。
もちろん個人差がありますが、会計事務所を開業しても記帳代行は一切せず、指導(巡回監査など)やコンサルに集中する人が少なくありません。
人嫌い
コミュニケーション能力の欠如、と言いたいところですが、それ以前の問題だったりします。
とにかく、人がダメ
結構、最近は多いのではないでしょうか。
ここで強調したいのは、人嫌いが悪い、と言っているのではなく、会計事務所での仕事は難しい、ということです。
とにかく所長への質問にせよ、顧客への回答にせよ、人嫌いでは話になりません。
また、人嫌いとまでいかなくとも、人を選ぶような人も結構、キツイかも。
特に顧客は、あなたと相性が合う人ばかりとは限らないからです。
上で述べた通り、愚痴をこぼされることもあれば、ウザいくらいに質問をしてくることも皆無ではありません。
忙しい時に、次々に質問等をされて(仕事が増えて)嫌気がさしてくることもあるでしょう。
こんな時こそ、自分は何のために仕事をしているのか、が問われてきます。
会計や税務を通じて顧客経営者をサポートしたい、この意気込みの大切さがお分かりいただけると思います。
数字が嫌い・カネの勘定が性に合わない
細かなカネ勘定が大っ嫌い
会計事務所を希望している人の中に、このような人がいるとは想定しづらいものですが、
案外いたりします。
とにかく、一般的な会計事務所の仕事は、顧客の月次経理、給与計算、そして決算・税務申告がメインです。
確かに税理士や会計事務所の仕事の核心部分とは、おカネの勘定や集計そのものではありません。
税法を適切に運用していくこと、さらには会計や税務を通じて経営をサポートしていくことが本来の職務です。
また、今日では会計ソフトや税務ソフトによって具体的な処理はしてしまいますので、直接あれこれ面倒な計算をすることはそれほど多くはなさそうです。
それでも、帳票類の起票のほか、細々とした辛気くさい作業はついて回るもの。
なので、現実的に見て、細かなおカネの計算や集計が嫌いない人は、会計事務所での仕事はやめた方がよいでしょう。


まずは転職エージェントにご相談を

税理士を目指したり、会計事務所で仕事を始める際には、さらに大切なことがあります。
それは、どの事務所に勤務するか。
特に初めて会計・税務実務を経験する人にとっては、まさに職業人生の岐路に立っているといえます。
せっかく税理士や会計事務所の仕事に向いていても、職場がブラックだったりすれば、意味がありません。
いやそれどころか、その後の人生が台無しになってしまう危険も…
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最後に

税理士・会計事務所に向いている人の特徴について解説してきました。
今回は少し欲張って(かなり理想像を想定して)書いてみましたので、
お読みになられて「自分は無理だ!」と思われた方もいるかもしれません。
でも(適性は問われるものの)実は心配する必要はそれほどありません。
なぜなら、全て完璧な人はいませんし、意識して努力していけばよいところも少なくないからです。
また、良き事務所に勤務すれば、所長や素晴らしいメンバーがあなたをサポートしてくれますし、
税理士試験に合格したら、今度は仲間の税理士たちがあなたを助けてくれるでしょう。
皆そうやって助け合って成長していくのです。
ぜひ皆様も、税理士・会計事務所の世界に足を踏み出してみてください。

