公認会計士に英語力は必要か?求められるレベルや年収との関係は?

今や国際化の時代。その背景もあって、英語学習は社会一般でも盛んです。
公認会計士なら尚更英語はできて当然、と考える人もいるかもしれません。

そんな中、例えば

  • 英語が必要なのはどんな場面?
  • 会計士に求められる英語力のレベルは?
  • 年収との関係は?

など、疑問もでてくるでしょう。

そこでここでは、公認会計士に求められる英語力について、様々な角度から解説していきます。

筆者は国際部勤務や長期の海外駐在といった経験はないのですが、海外連結子会社を有する大企業の監査を複数担当してきました(主にメーカー)。
また、大変幸せなことに、欧米勤務経験のある方々に囲まれて過ごした時期もあり、いろいろとお話を伺うこともできました。
そうした背景も踏まえ、「公認会計士と英語力」を巡る実情を率直にお伝えできたらと思います。

ちなみに筆者の英語力ですが、
前職が特許事務所ということもあって(弁理士資格あり)読み書きに関してはあまり不自由を感じてないかったのですが、会話は苦手。
恥ずかしながら、リスニング等に多少なりとも自信が持てるようになったのは監査法人を辞した後でした(家業の特許事務所を引き継いでいくにあたり、提携先の海外事務所と頻繁に連絡を取る必要があった)。

目次

公認会計士に英語力が求められる場面・背景

最初に、”公認会計士に英語力は必要か?”の問いに答えておきたいと思います。

結論は、

基本的に英語力がなくても大丈夫
あればそれだけ可能性が広がり、キャリアアップ、年収アップにも結び付きやすい

となります。
会計士のクライアントは国内企業が中心であるうえ、会計士自身に真に求められるものが、英語力そのものではないからです。

ただしあれば圧倒的に有利です(というより状況によっては必須となってきます)。
その辺を中心に以下で深堀していきます。

監査法人の国際部では必須

会計士に最も英語力が求められる場面が、BIG4を中心とする監査法人の国際部です。

その国際部では、主なクライアントは外資系企業となります。
本国に親会社があり、その日本法人(子会社など)の監査を担当するわけです。

当然ながら監査の現場で提出される書類や資料は英語で書かれたものが殆どです。
それこそ、帳簿類はもちろん社内規定や契約書、インボイス(請求書)なども基本的に英語で書かれています。

また、上のポジションにいくほど、クライアントの外国人幹部とやり取りする機会も生じてきます。
海外本社のネイティブ幹部が関わってくることもあるでしょう。

ここでは単に英語の読み書きだけではなく、会話もしっかりこなせることが期待されます。
単なるビジネス英会話ではなく、交渉力を伴う英語力です。

ただし(外資のクライアントといっても)フロント担当者は通常、日本人ですので、現場スタッフがコミュニケーション自体に困ることはまずありません。

監査法人国内部でも大いに役立つ

全く海外との取引がない、海外に支店や子会社がない、というクライアントでしたら英語はあまり関係ないでしょう(中小監査法人や個人事務所など)。

ですが、特に上場企業であれば、多かれ少なかれこうした海外との関係は切っても切れないもの。
どこかで英語で書かれた書類に出くわすはずです。

身近なところでは英語で書かれた決算書やアニュアルレポートです。

ただし英文決算書を読むぐらいでしたら、それほど難しいものではありません(英文と言っても勘定科目や定型文の注記ぐらいなものです)。

むしろ難しいのは、契約書などの英語で書かれたドキュメントです。

筆者が昔、大手国内メーカーを担当していた時のこと、
監査資料として英語で書かれたものが、ドサッと提出されたことがありました。

そのクライアントの製品に関連して外国でアクシデントが発生したのですが、それについての緊急レポートでした。
ビジネスや会計に影響する重要な内容が書かれていたと記憶しています。

国内部門でも英語のリーディング力は重要だと痛感したものです。

海外事務所(現地の監査人)とのコミュニケーションはもちろん英語!

海外に本社のある外資でしたら、その日本法人(現地子会社)の監査結果などを本国の監査人に送る必要があります(国際部はこれを担当します)。

また、逆にグローバルに展開する日本企業の海外子会社等が、その現地の事務所の監査を受けていたりします。

連結決算する関係上、これらの監査結果をはじめ、様々な報告や指示を相互にしていくのですが、
これらにつき英語でコミュニケーショをとるのが通常です。

IFRS&USGAAPの導入

今日では、皆さんご存じの通り、会計の国際化が進んでいます。

そうした背景から日本の会計基準で作成した決算書をIFRS(国際財務報告基準)やUSGAAP(米国会計基準)で作り直したり、またその逆のことをしたりします。

また、日本基準以外の基準で作成された決算書は英語で書かれることが多いです。
これらの決算書が読めないと仕事にならないことも少なくありません。

さらに、これらIFRSやUSGAAPは目まぐるしく変わるものであり、タイムリーに情報収集するには、その原文を読みこなしていく必要もでてきます。

特にクライアントからの問い合わせに多いのが、新しい会計基準や制度の動向について。
国際部などでは、これらについての日本語訳をつくることも期待されます。

こうした場面で「英語で書かれてるので、自分にはちょっと…」などとなってしまうと、信頼関係に差し支えますよね。

転職でも威力を発揮

転職の際でも英語ができると大変有利です。

特に大企業を中心に、先ほどのIFRS(国際財務報告基準)やUSGAAP(米国会計基準)での決算書を作成するところが増えてきています。

そこでは会計プラス英語”の組み合わせは、企業側からしても是非とも身に着けたいスキルの一つ。

しかも公認会計士資格とその実務経験が加わることで、転職市場では最強の位置づけと言えるでしょう(後述)。

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監査法人ではどのくらいの英語力が求められるか

部署別・ポジション別の英語レベル

近年、履歴書やエントリーシートにTOEICの点数欄が儲けれることが多くなりました。

もっとも、国際部でもない限り、新人(試験合格者)に最初から高い点数が求められるわけではありません。

むしろ、英語力が求められることがあるとしたら、事務所入所後です。

ザックリ言うと、TOEICの点数でしたら、国内部で700以上、国際部で800以上、と言ったところでしょうか。

ただし、700点というのは、英語力のスタート地点であり、点数的には800点以上を目標と考えるべきでしょう。

また、TOEICの点数は一つの目安に過ぎず、実際の実務の現場ではリーディング力はもちろん、ポジションによっては高度な交渉力まで求められます。

ひとつの目安とを挙げると、次のような感じです。

スクロールできます
ポジションTOEIC実務
国内部現場クラス600基本的なリーディング
国内部マネージャー以上7~800リーディングに加え会話力
国際部現場クラス800以上経理の専門用語や英語で書かれたマニュアルを読める
国際部マネージャー以上900以上ネイティブの管理者や幹部と交渉できるレベル

国内部については、TOEICの点数は(絶対ではないものの)昇進のための一つの基準となっているところが増えています。

また、特に大企業については、英語で書かれたレポートが普通にでてきたりしますので、リーディングぐらいはできるようにしておくとよいでしょう。

さらに言えば、在外子会社のアニュアルレポートなどもありますので、英文会計の入門書ぐらいはマスターしておくことをオススメします。

これに対して国際部になると、英語力に対するニーズは格段に上がります。
上でも述べたように、経理資料をはじめ書類は基本的に英語ですし、監査マニュアルや指示書も英語で書かれています。

国際部で上にいくと分かりますが、こんなのはできて当たり前(というよりイロハのイです)。
(クライアントの)ネイティブ幹部との交渉までこなせないと、仕事にならない(責任が果たせない)のです。

このクラスですと、正直「英語が必要」などと言っている次元ではありません。

国際部の最初の洗礼?:
実は筆者はBIG4(当時はBIG6)の国際部から内定を頂いたことがあります。
その際、監査マニュアルを見せてもらったのですが、分厚い電話帳のような冊子に英語がビッシリと書かれていました。
ほかにも、いろいろと業務について話を聞かされたのですが、だんだん心細くなっていったのを覚えています。
幸か不幸か、その年は結局不合格でチャラになったのですが、BIG4の表向きの華やかさとは裏腹に、CPAの厳しさを垣間見た思いでした。

海外赴任の際の英語レベル

海外勤務をする際でも当然ながら英語が求められてきます。
そこで、スタート時点の英語力(赴任できるレベル)を示しておきます。

スクロールできます
海外勤務の種類内容求められる英語力
法人の海外研修プログラムに参加する語学研修から実務までTOEIC800~(実務の場合)
駐在員として働く主に日系企業向けの営業活動TOEIC600~
現地スタッフとして専門的な実務を行うバリバリの実務ネイティブレベル

海外での仕事と言ってもその目的や内容に応じて求められるレベルも変わってきます。

実際、日系企業向けの営業や語学研修ではそれほど高度な英語力は求められないようです。
筆者が監査法人にいた頃は、英会話があまり得意でない人が営業で赴任していたり、BIG4からも語学研修に参加される人がいました。

他方で、研修も含め専門実務に携わるとなると話は別。
例えば調書等のレビューも(英語で)機関銃のように浴びせられます。

これに対して上手く対応できないと、容赦なく派遣元である日本の法人事務所にクレーム(?)がいくようです。
現地採用の場合はさらに厳しく、解雇通知(pink slip と呼ばれていた)が直ぐに渡されることもあるとのことでした。

そこで、こうした点も含めて、会計士と英語力について注意すべき点を次に解説します。

警告!英語力=実務能力ではない

英語力が盛んに叫ばれるせいか、実務能力についての誤解があまりに多いので、ここでは少しばかり注意喚起をしておきます。

結論は、

  • TOEICの点数は、実務上の英語力を保証するものではない
  • 英語力=会計士としての実務能力、ではない

例えば、米国の大学を卒業して(もちろん英語ベラベラ、TOEIC満点)現地のBIG4に入所した場合、彼ら、彼女らに何が待ち受けているか想像つくでしょうか。

現実として(あまり表にでませんが)現地の激烈な競争についていけず、ドロップアウトして帰国、
しかも、国内で新たな就職先が見つからない、あるいは日本の新しい状況や基準についてけない、なんてケースが少なくありません。

冒頭で「会計士に求められているのは、英語力そのものではない」と言いましたが、
英語力云々どころではない厳しさが待ち受けています。

ただし、こうした現実を十分認識の上、若い人たちが高みを目指して挑戦していくことは、もちろん十分アリです。

なので日々の実務を通じて、ご自身の適性やポテンシャルを是非見極めていただきたいと思います。

英語力と年収との関係について

英語力があれば、選択肢がそれだけ広がることを意味します。

例えば、ほんの一例ですが、

  • BIG4のパートナーを目指す(年収にして1500万~)
  • 総合商社や金融機関に転職しCFO等、財務・経理部署の幹部を目指す(年収にして1500~2000万位をよく見かける)
  • 海外勤務、さらには現地にて国際的なキャリアを目指す(現地採用では、実力次第で青天井?)

などがあり、年収アップのチャンスが高まることは確かと言えます。

ただし注意点もあります。
パートナー昇進に際しては、通常、英語力はプラスα的な位置づけであり(注:国際部は必須条件)、
企業への転職しても、まず求められるのはマネージメント力やリーダーシップです

また、海外勤務ではさらに厳しいものが要求されるのは上で述べた通り。
こと財務や経理といった専門部署では現地の学位や資格が求められることもあり、そのハードルの高さがうかがえます。

例えば、米国にて専門実務に携わるには、USCPAが必須で(研修を除く)、これがないと昇進はもちろん業務にも制約がでてきます。

筆者の知人で現地(米国)に赴いた人は、USCPAを取得してやっと差別が無くなった、とまで言っていました。
もっとも、これでやっと競争のスタートラインに立ったことになります。

上で述べたことと関連しますが、

英語力=年収アップ、とは限らない

ことに注意したいものです。

公認会計士の英語力の身につけ方

ここでは、英語力の身につけ方についてまとめておきます。

  • TOEIC対策
  • ネイティブたちと積極的に交流する
  • 法人内の海外研修・出向制度を積極的に利用する
  • オンライン英会話(法人の支援制度を活用)

一部補足します。

サイトなどを検索してみると、駐在員経験者たちの体験談がいろいろと掲載されています。
どの記事もとても参考になるのですが、注意も必要です。

中には、ネイティブたちと交流するだけで、あるいは海外駐在を経験しさえすれば英語ができるようになる、こんな記述を見かけます。

ですがやはり、英語力が向上していくのは、基礎があってのこと。
英文法やリーディングの基礎は必須です。

確かに会計士試験合格者の学歴は高く、もともと英語の得意な人も多いと思いますが、
そうでない方は要注意。

具体的には次のような事項です。

  • 文法や構文等の基礎知識の確認(特に中学英語は完璧になっているか)
  • リスニングやスピーキングはある程度独習しておく(シャドーイングの練習など)
  • 最低限の基本的なフレーズは(100~200ほど)インプットしておくとよい
  • 英文会計の学習(さらにはUSCPA)

マスターできている人は良いのですが、
そうではなく、いわゆるフィーリングだけで英会話をしようとしても、片言英語を口にするだけで終わってしまうものです。

ただし英語に不安がある人でも、実は大丈夫。
ゼロ(中学英語の復習)から一つ一つ落ち着いて勉強していけばよいのです

また、英語の基礎ができたら、TOEIC対策に取り組んでもよいですし、せっかくなら会計分野を英語で学習してみるのもよいでしょう。

その際は、基本的な英文会計の入門書を用いて、アニュアルレポートや英文決算書を読めるようになることを目標とします。

実際はテクニカルタームやフットノート(注記)など(の言い回し)を学ぶことになりますが、
内容的にはは会計士試験の勉強でかなりカバーできると思いますので、とっつきやすいのではないかと思います。

さらに、これとは別に最初から高度な英語力を目指したい方もいると思います。
そのような方には、ビジネスマンや専門職向けの本格的な英会話スクールがオススメです。

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(補足)監査法人以外の転職で求められる英語力について

転職先企業にもよりますが、
例えば商社や外資企業への転職には、TOEIC800点は最低必要などと言われます。

しかも、中途採用の場合は即戦力が求められますので、監査法人内で要求される英語力よりも高いレベルが求められてくるはずです。

つまり監査法人と異なり、社内では(英語力も含めて)「あなたこそが頼りである!」ぐらいに期待されるということです。

なので(企業にもよりますが)英語力もTOEIC800点などでは足りず、最新のIFRSやUSGAAPをスラスラ読みこなせるぐらいは必要になってきます。

そのうえで新たな基準の適用を巡り、日々、判断を迫られるのです。
バックの仕事だからといって、単なる経理事務ということはありません。

まとめ

公認会計士と英語力との関係について、様々な角度から解説してきました。

簡単に総括しておきます。

  • 国際部でない限り、必ずしも英語力は必要ではない
  • 求められる英語力は、ポジションやキャリアパスにより変わってくる
  • 英語力があると年収アップの可能性は高まるが、英語がすべてではない
  • 英語学習は、基礎力を前提に英文会計を学んだり会話力に磨きをかけるとよい

英語力は、分野に限らず今後ますます必要な能力として求められるようになっていきます。

ご興味のある方は実務とともに勉強していくとよいでしょう。

ぜひ挑戦してみてください。
ご発展とご活躍を期待しています。

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